Ninths *Nightmare
3
「…お嬢ちゃんは本当にルシアに似ている…外見だけではなく内面もどことなく似ているな…」
カントさんは手摺に肘をつき、私に向かってポツリと呟いた。
「…でも、バベルさんは全然似てないと…」
「それは…似過ぎているからだ。きっとアイツは怖いんだ、
また大切な人を失う時が来るんじゃないかって思ってしまうんだろうな。」
「………」
本当に…?バベルさんはそんな風に思ってくれてたのかな…?
「アイツはきっとまだ悔やんでいる…アイツを助けてやれるのは君しかいないと思う…
そんな義理などないことは分かっているが…カイリさん、アイツを助けてやってくれ。
アイツは俺の息子みたいなもんなんだ。」
カントさんはその姿からは想像できないくらい深々と頭を下げた。
「勿論です…私なんかが役に立つのなら…!」
「…ありがとう…。」
少しでも役に立つのなら…バベルさんを助けるお手伝いができるなら…
頑張りたい…会って、ごめんなさいを言いたい…
『アイツが帰ってきていると言う事は、昔暮らしていたアパートに行っているはずだ、
俺は今から仕事で行けそうにもない…すまないが行ってきてくれないか?』
「…210号室…ここね…」
カントさんからもらったメモを持ってカジノから少し離れた裏手のアパート前にやってきた。
どうやらここが、昔バベルさんが暮らしていたアパートらしい…。
ここまで来ながらも、やはり行こうか行くまいかまだ躊躇いがあった…。
「うわっ可愛いお姉さん♪今一人??」
「えっ!?あっそ、そうですが…」
アパートの前で立ち止まっているといつのまにか3人組の青年に囲まれた。
明らかに染めている金髪に青髪…ピアスに煙草…怖い…
「へーせっかくの夜なんだし俺らと遊ぼうぜ♪楽しませてやるぜ?」
「あっあの…!」
「紫の髪なんてキレイだね〜♪…君が振り乱す姿見たいなぁ…」
「っ…!やっ…いやっ!」
髪に触れられて咄嗟に声が出てしまった。
…怖い…怖い怖い怖い怖い!!!!!
「かわいい声出すじゃん、ほら行こうぜ!」
「っ…やっ…!!」
「おっと、あんまり大きな声出すとキレイな顔に傷がつくぞ?」
「・・・っ・・・!!」
怖くて体が動かなかった…私は強引に手を引かれ夜の街に戻った…
久々に戻ったアパートは、俺が出ていった時のままになっていた。
暫くアイツと過ごしたこの部屋で休んでいると、もうすっかり外は暗くなっていた。
『っ…!!やっ…いやっ!』
『かわいい声出すじゃん、ほら行こうぜ!』
「…!!」
嫌な予感がした…俺は開いてる窓から身を乗り出して見ると、
3人の男に連れて行かれるアイツがいた…
なんでアイツがいるんだよ…なんで…!?
「…っ、くそ!!」
いてもたってもいられなかった。
なんでアイツがこんなところにいるかなんてどうでもいい。
俺は一目散に部屋を飛び出した。
どうか…!!どうか間に合ってくれ…!!!
今度こそ、あんな悪夢は、見せないでくれ・・・!!!