Seventh Re;Melody

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「そういえば屋敷での暮らしにはもう慣れた?」

「あ、はい!でもまだまだ出来てない事もあるのでこれからもっと頑張りますね。」

「カイリちゃんはよくやってるよ、俺達住人とも仲良くなってきたし順調そうだしね。」

「ありがとうございます。皆さん本当に優しくて、仲良くして頂けてすごく嬉しいです。…でも…」

  

 

 

  

屋敷での生活は楽しい。
仕事にも少しずつ慣れてきたし、かわいいペットも出来た、何より住人達と仲良くなれたから。
しかし、やっぱり皆が皆仲良しというわけにはいかないもので…

  

 

  

 

「バベルさんには嫌われてます…」

  

「え?そうなの?嫌ってはないと思うよ?アイツ、中々の曲者だけど悪いやつじゃないよ。」

アルフは手摺にもたれかけていた身体くるりと翻し、首だけカイリに向けた。

「なんとなく分かる気がします…。…バベルさんとはつい先日も色々ありまして …」

 

「あ〜、明け方のあれかぁ…」

 

「バベルさんにも何か事情があるのかもしれません…もしかしたら私が何かしたのかもしれません…。
でも!私はやっぱり仲良くなりたいんです!でも贅沢は言いません!とりあえず嫌われたくなくて…!」

 

「うん…それで?どうする?」

 

 

熱く語るカイリに優しい目を向けるアルフ。
しかし、その表情はほんの少し意地悪だった。

 

  

「………これからうっとうしいくらい絡んで行きます!ウザイって言われても折れません!!

   

  

一瞬怯みそうなカイリだったが、後に引き下がれないと思ったのか胸の前で小さくガッツポーズを作った。

 

 

 

「あははっ、なんだかカイリちゃんらしいね。」

「…ふふふっ」

 

 

アルフが声を出して笑うと、曇り気味だったカイリの表情に穏やかな笑顔が見えた。

 

 

 

「良かった…やっと笑ってくれたね。」

「…え?」 アルフはほっとしたように目を細めてカイリの顔を覗き込んだ。

「今日一日中思い詰めた顔してたからさ、ちょっと気になってたんだ。」

「あ…ありがとう…ございます…」

 

 

アルフなりに気を遣っていたらしい。
カイリは目を丸くして嬉しそうに口許を片手で覆い小声でそう言った。
アルフもアルフで照れくさそうに髪を掻きあげる。
そんな彼が可愛く思えたのか、カイリは優しくほほ笑んだ。
 

 
 

 

   

 

  
サァッ…
 

  

  

 

 

 
暫く二人で他愛のない話をした。好きな食べ物は何かとか、自分達の趣味だとか…
気付いたら時計は4時を回っていた。まだ日の昇らない夜は冷え込んでいて、
昼間とは違う冷たい夜風がカイリの長い髪を舞わせる。
その髪の間からちらりと見える白いうなじが艶やかに照らされる。

 

 

サラッ……

 

 

「…ぁわっ!」

  
「おっと、ごめん!」

  

 

そんな艶やかなカイリの髪をなでるアルフ。
驚いたカイリは声にならない声を出して咄嗟に振り返り、首をすくめた。

 

 

「いっ…いえ、びっくりしただけです、すっ、すみません!」

「ははっ、こっちが悪いんだし謝らないでよ。」

「はっ、はい…」

 

 

『うわぁ…びっくりした…』

 

 

カイリはポンポンと軽く胸の上を叩いて自分を落ち着かせる。
しかし、急に触られたものだから、どう反応したら良いのか分からなく、すぐ緊張する自分がまた恥ずかしかった。

 

 

「にしてもサラサラしてて気持ちいいね、癖になりそうだよ♪ってあれ?大丈夫?顔真っ赤だよ。」

「えっ!?あっ大丈夫です!」

 

 

アルフが心配そうにカイリの顔を覗き込む。
カイリはピクッと震えて桜色に色付いた頬を両手で隠しアルフに背を向けた。
さっきから早かった心臓の鼓動がまた一段と早くなった。

  

 

 

『あぁ…なんでこんな恥ずかしいんだろ〜…髪触られただけだよ?顔がちょっと近かっただけで…、近…///』

 

 

 

顔が近い…この前のバベルにキスをされた時の事を思い出した。
また頭の中がパニック状態…バベルがそうだったとは言えアルフがそうだというわけではないのに、
経験のないカイリは一人で悶々としている。

 

 

 

「カイリちゃんの髪ってすごくキレイだね。深い紫色、羨ましいな。それにサラサラしてて触り心地もいいし♪」

「あ…また触る…」

「いーじゃん!気持ちいいんだし♪」

 

  

 

全く悪気なく自然にカイリの髪を指で梳いたり、撫でたりするアルフ。
カイリも慣れてきたらしく照れながらもどこか嬉しそうに笑った。

 

 

「い、良いですけど…私は…アルフさんの髪の方が好きですよ。ふわふわしたえんじ色なんて憧れます。」

「そう?でもすぐ絡まったりするからね〜手入れが面倒だよ?」

 

  

自分の髪を掻き上げて苦笑するアルフ。えんじ色の髪がふわりと風に踊る。
しかし、ここの住人は何をしても様になるようだ…。

 

 

「ふふっ、アルフさんはお手入れ完璧ですもんね。…私も頑張らなきゃ。」

 

  

屋敷で一番ファッションやアクセサリーにこだわるアルフはしょっちゅうヘアセットをしている。
シャンプーやコンディショナーも彼だけ自分の特注の物を使っていて
美への探求心は他の住人達はおろか女性であるカイリよりも断然上だった。
カイリの中の女としてのプライドと競争心が燃え、またも小さくガッツポーズを作り自分に誓った。

 

  

 

「いや、元から美形なハイドやワイズとかはそんなに頑張らなくても良いけど
俺は違うからねぇ〜やっぱりそれくらいしないと♪」

 

 

 

カイリからしたらハイドやワイズは勿論だがアルフを始めとする他のメンバーだって超美形である。
しかし、真正面からそんな事も言えず、ただ『いや!そんなっ!』としか言えなく、
そんな彼女を見てアルフはプッと噴出した。

 

 

 

「ははっ、ホントおもしろいね、君は。」

「おもしろくないですから!」