Fifth *Dante...
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「…」
ゆっくり玄関の扉を閉める。
カイリはあのあと屋敷に戻る道を歩いていたがダンテの事がずっと気になってしょうがなかった。
「浮かない顔だね。…何かあった?」
玄関を通り掛かったアルフがいつもと様子の違うカイリを見つけ近寄ってきた。
「あ!アルフさん!」
「困ってるなら頼ってよ。俺でよければ力になるよ。」
「ありがとうございます…。えっと…あの、ダンテの…事なんですけれど…」
「あぁ、ダンテはね、今謹慎処分中なんだ。」
言いにくそうに口をモゴモゴさせるカイリの言葉を代弁するようにアルフはゆっくり話し出す。
「なんでですか?暴力沙汰って聞いたんですけど…違いますよね?」
「それが本当なんだな。」
「え…」
いつも明るく元気なダンテが暴力沙汰なんか起こさない…
そう信じ込んでいたカイリは目を丸くしてアルフを見た。
「アイツあー見えてカナリ頭良くてね、あのエンデール学園でもいつもトップの成績だったんだ。
しかも見た目も中々でしょ?勿論俺ほどじゃないけど。」
「あ、はぁ…」
「まぁそんなダンテを良く思わない奴等が何人かいたんだ。
それである日ダンテはリンチにあったんだ…」
「そんなの…!!」
「でもね、ダンテは頭だけじゃなくて腕っ節も強いんだ。
5人に囲まれたのに5人共ボッコボコにしちゃったんだ。」
「すごい…」
圧巻だ。ただのやんちゃなガキじゃないのね…とカイリは呟く。
「ただね、それも向こうの計算内、優秀なエンデール学園の生徒が
暴力沙汰って事で半年の停学・謹慎処分ってわけ。」
「理不尽だわ…」
「ちなみにその指導者がエンデール学園の学長の息子ジルバだったんだ。」
「さっきの子ね…。でも、謹慎期間が半年なんていくらなんでも長すぎじゃありませんか?」
「うーん…中々酷かったらしいからねぇ…」
「でも、ただ囲まれて自己防衛で…」
「いや、違うんだよ。」
「…え?」
「アイツの家族の話が出たんだ。」
「ダンテの家族…?」
「あぁ、アイツね、自分が8才の時両親と弟を事故で亡くしてるんだ。
ダンテが行きたいって言った山でのキャンプの帰りに事故が起きたらしいからね・・・
家族が亡くなった原因はお前だったんじゃないかとか酷い言われようだったらしいよ。」
「そう…なんですか…だから・・・」
『この人殺し』
ダンテはどう思ったのだろうか、家族を亡くして、一人で生きていき・・・
きっと、色々な気持ちを抱えているに違いない、それなのに・・・
聞けば聞くほど聞いて良かったのかと思う過去ばかりで、カイリは片手で頭を支える。
どう反応したらいいのか段々分からなくなり、カイリは静かにアルフの話にうなづくばかりだった。
「あ…でも、友達はいたんですよね?なら…」
「いや、いないよ。その件が起こってからは周りは蜘蛛の巣が散るように去って行ったのさ。」
「ひどい…」
「エリート校なんて所はそんなもんさ。」
「え…それじゃあ、今日友達と会うっていうのは…」
「今日?…あぁ…アイツもしかして…」
「なんですか?心当たりでもあるんですか?」
「あぁ…知りたいかい?」
「はい!教えて下さい!」
「…分かった、ただし…気をつけてね。場合によってはカナリ危険な所だよ…」
「はい…!」
目を細めてアルフはカイリを見つめると、アルフは手持ちの手帳に場所を書きそのページを破りカイリに手渡した。
『胸騒ぎがする…』カイリは買った物をアルフに渡し再び扉の向こうへと飛び出して行った。