Fifth *Dante...
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「あ!コショウと油がきれかかってる…買いに行かなきゃだわ…。」
時計が3時を指した頃、いつもより早く夕飯の準備に取り掛かろうとしたカイリだったが、
調味料がいくつか残りの量が少ない事に気付きエプロンを外して買い
物に行く準備をする。
「あれ?カイリさん、どうかされましたか?」
「クリスさん!ちょっと調味料を買いに行ってきます!すぐ戻ってきますから。 」
「そうですか、分かりました。」
支度をして廊下に出ると、地下図書室から出てきたクリスと鉢合わせた。
「…あのクリスさん。」
「ん?なんですか?」
「ダンテって、高校生ですよね?」
「えぇ、そうですよ。ああ見えてアンシャンテ一優秀校のエンデール学園に行っ てるんですよ。」
「エンデール!?めちゃくちゃ賢いじゃないですか!」
帝都の極々普通の学校に行っていたカイリからしたらエンデール学園なんて恐れ多い学校だ。
そんな所にダンテが行っていたなんて予想もしていなかった。
「え、でもダンテが学校行ってる所…私見た事ないんですけれど…」
「…そうですね。」
「何かあるんでしょうか?」
「んー…それは分かりません。それにダンテ自身の問題ですから。」
「…そうですか。あ、それじゃあ行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
理由をきいた途端口をつぐんでしまったクリスを見て、
カイリは知りたいけれど聞けないもどかしさがあった。
納得がいかないながらカイリは買い物へと出かけた。
「コショウと油…他は大丈夫よね。」
手早く買い物を済ませ外へと出る。
日が暮れる前に早く帰らないと…とカイリは、いそいそとスーパーを去った。
「…あれ?あそこにいるのは…ダンテ?」
暫く歩いていると、向いのバス停にダンテの姿が見えた。
夕方から外出すると言
っていたのを思い出す、今から友達の元へと向うのだろうか。
そんな事を考えな
がらカイリは遠巻きにダンテを見ていた。
「あ…あれ…?」
暫くするとエンデール学園の制服を来た少年3人がダンテに近寄り話しかけていた。
友達なのかと思いきや、どこか様子が違っていた。
胸騒ぎがしたカイリは気付かれないようにダンテ達の方へと静かに近付く。
「へぇ、珍しいやつがいたもんだ。」
「!?…ジルバ…」
「お前謹慎中のくせに出歩いちゃっていいの?」
「あ、もしかして塾とか?トップレベルの賢いやつは
あんな学校なんか行かなくても塾だけいきゃ良いってか?」
見るからに性格の悪そうな3人はダンテを囲むようにして次々嫌味を言う。
こういうのを見たり聞いたりするだけでヘドがでるわ…とカイリは影から様子を伺っていた。
「…なんだよ、用がないならさっさと帰って勉強でもしろよ、落ち零れ。」
「なんだとテメェ、調子こくなよな?お情けで引き続きうちの学園に在籍させてやってんだからよ、
もう少し口のきき方ってやつを考えた方がいいんじゃねぇの?」
ジルバと呼ばれたリーダー格の少年は腹を立てダンテの胸倉を掴んで脅す、
どうやら彼はエンデール学園の学長と深い関わりがあるようだ。
カイリはビクビクしながらその場に止まる。
動きようにも動けない状況が続く。
「放せよ、親の脛齧り。」
ドガッ
「ちょっと黙ってろやお前…」
「ははっ!暴力沙汰で謹慎なってんならやり返してこいよ、オラァ!」
「ぐっ…!」
「はっ、お前自分が犯した罪わかってんの?この人殺しが。」
「・・・っ」
「あははっ、それじゃーな。おい、お前ら行くぞ!」
ダンテが胸倉を掴む手を振り払うと少年達は一斉にダンテに暴力を振るい、
意味深な言葉を残し、さっさとその場を後にした。
「…ダンテ!」
「カイリさん…!?」
「大丈夫?!」
「…っ、なんでいるんだよ…」
駆け寄るカイリに一瞬だけ目をやり、口元についた血を拭う。
そのあとはずっと
俯いたまま話すダンテ、いつもより低い声にカイリは後込みしてしまう。
「え…その、買い物に出てて、そしたら偶然ダンテを見掛けたから…怪我してるじゃない!早く手当て…」
「ほっとけよ!!カイリさんには関係ないだろ?!いちいち干渉すんなよ!!」
「ダンテ!!」
辛そうな表情を浮かべダンテはカイリを置きどこかへと走り去ってしまった。