First Secret Library

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 そして、今日の昼食はパエリア。

 
パエリアは一般的に海の幸が決まりものだけど山の幸も負けてらんない!
大好きなキノコや山菜をふんだんに使った贅沢な山の幸パエリアにチャレンジ。
その横でおやつのクッキーとアップルパイの下準備もこなす。一度に3つするの
だからもちろん手が追い付かない…手が6つあればいいのに…
 

 
そうこう考えながら昼食は完成した。
ご飯が出来たら住人さん達を呼びに行かなければいけない。
ダンテとアルフさんが外出した為クリスさんとハイドさん、そしてワイズさんを
呼ぼうと準備を終えたダイニングから廊下に出る。
 

 
「!」
 
「あ、ハイドさん!」
 

 
廊下に出ると身なりを整えたハイドさんが、
急に出てきた私にびっくりして目を丸くして立っていた。
 

 
「ちょうどお昼食が出来たので呼びに行こうとしてたんです。」
 
「今から出かけるんだ、昼食はいらねぇ。」
 
「あ…そうですか…」
 

 

 
ハイドさんは要件だけ言うとさっさと通り過ぎ、エントランスホールへと向かった。
 

 

 
ホント、そっけない人!
 

 

 
ってことは、クリスさんとワイズさん…クリスさんはきっと自室だわ。
 
気を取り直して二階へと上がり奥へと突進む。
 

 

 

コンコンッ
 

 
 
「クリスさん!お昼食できました!」
 

 

 
ガチャ
 

 

 
「あぁ、どうもありがとうございます。ちょっと手が放せないので後程勝手に頂きますね。」
 
「分かりました。…あ、ワイズさんも自室ですよね?」
 
「えっと、多分地下図書室だと思いますよ?この時間はいつも本を読んでいますから。」
 
「地下図書室…?」
 
  

  

 
 
初めて知ったその図書室へと向かう。
ひっそりとある下に続く階段をゆっくり降りる。
幸い結構明るいから怖くはなかった。降りた先には古びた扉。
ついている鍵も、見た事がないくらい古そうなものだった。
 

 
ガチャ…
 

 
鍵のかかっていない開きかけの扉を開けて中に入る。
 

すごい・・・
 

本当に図書室だわ…
大きな本棚がいくつも並びどこまでも続いている。
これだけで図書館作れそうね…

 
 
室内を歩き回ってワイズさんを探す。
 

 
一般書は勿論の事、歴史のある古書や文献や、外国の本などが数多くあった。
 
そして奥の奥まで突進むと椅子に座り本を読んでいるワイズさんを見つけた。
  

 

 
その姿が随分様になっていてほんの少し見とれていた。
 

 

本当に、ほんの少しだけ

  

 
それから恰も今見つけたように飛び出してみる。
 

 

 
「…あ!ワイズさん発見です!」
 
「…お前か…」
 

 
ぴくりとページをめくろうとしていたワイズさんの指が震える。
顔はそのままで視線だけこちらに向ける。
 

 

 
「昼食の支度が出来たのでダイニングに来て下さい。」
 
「あぁ、もうそんな時間か…」
 

 

 
やはり食事は好きなようで…昼食と言うとすぐに本を閉じた。
私は閉じた本の表紙が気になり指をさす。
  

 

 
「ん?何の本読んでるんですか?」
 
「…料理本…」
 

 
なんで!!?
 

顔を若干赤らめて料理本を大切そうに眺めるワイズさんに色々と突っ込みたかった。
 

 

 
「…お腹すいてたんですか?すみません、ご飯作るの遅いばかりに・・・」
  

 

 
やっぱり加減して食べたから…と内心思った。
でもいくら空腹を満たす為で料理本はないでしょう…
 

 

 
「違う。…趣味なんだ。料理が…」
 
「そうなんですか!意外です…食べるだけじゃないんですね。」
 
「…昼食だな、食う。」
 
「あ、はい!じゃぁ行きましょう。」
 
 

 
ちょっと難しい顔をするとワイズさんは立ち上がり扉の方へと歩き出した。
 
 
 

 

 

 

 

 
ガチャ…ガチャガチャ!!
 

 

 
「あ…あれ…?」
 

 

 
まさかのまさかの事態発生…!!

 

 
扉が開きません…!!

 

 
ガチャガチャと何度も何度もドアノブを回す。
鍵なんてかけてないのに〜!!
 

 

 
「オイ…閉めたのか?」
 
「はい、でも軽く閉めただけです!鍵なんてかけてませんよ!」
 

 

 
必至に弁解する。
だって普通開けたら閉めるでしょ?!
 

 

 

 
「ここの扉は立て付けが悪いのか閉めると勝手に鍵がかかるんだ。」
 
「えぇー!?なんで修理しないんですか!」
 
「知らん。あと壊すなよ、クリスにシメられるぞ。」
 

 

 
近くにあった台を持ち上げて扉を無理にでも開けようとしたが、
それを聞いて台をいそいそと降ろした。
 

 

 
「うぅ…;;鍵って…中はダメだし…外から開けてもらうしかないんですか?」
 
「あぁ。夜になればクリスが来る。それまで待つしかないな…」
 
「夜ってどれくらいです?」
 
「1時か2時…」
 
「深夜じゃないですか!!」
 
「いや、8時ぐらいか。」
 
「…;」
 

   

 
あまりにも真剣な風だったから、からかっているのか、ただのボケか微妙なラインだった…
  

  

  
「まぁ良い…本でも読むか…」
 
「冷静ですねー;前にも同じような事があった…とか?」
 

 

 
「…」

 

 
「あったんですか!あったんですね!?」
 

 
あまりにも慣れているその様子に疑問を持った私は勢いよくワイズさんに詰め寄る。
 

 
「そんな細かい事は気にするな…今回はお前のミスだろ。」
 
「まぁそうですけど…ってお前呼ばわりしないで下さい!私の名前は、カイリ・ファンナイトです!」
 

  
ツイと顔を背けて自分の事を棚にあげ再び奥へと向かうワイズさん。その後をぴ
たりとついて追って苛立つ気持ちをぶつける。
 

 
「ギャーギャー喚くな、静かにしてくれ。」
「むむむ…」
  

   

  
料理本のスペースに戻りまた椅子に座る。
ずっと立っているのも何なので私もその隣りに座る。