First Secret Library

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「あ、ここだ…」
 

 
息を飲む。
 
唾も飲む。
 
ついでにお茶も飲む。
 

 
…って和むんじゃなくて!
 

ノックをしようと左手をあげる。
  

 
…動かない…あぁ…
  

 
私っていつからこんなにチキンだったのかしら…

いやいや、私はチキンとかMなんかじゃない!

私は…れっきとしたSだ!!
 

 

 
ダンダンッ!!
 

 

 
「わ、ワイズさん!」
 

 
わけの分らない気合いの入れ方で力をこめすぎた私は思った以上のノック(?)になってしまった。
 

 
「朝ですよー」

 

 

ガチャ
 

 

 
散々ノックしたドアが開きえらくスッキリとした微笑んだワイズさんがいた。
 
へぇ…ワイズさんもこんな顔するんだぁ…
 

 
「あ、おはようございます、朝食の準備が出来たので…」
 

 
ぐいっ
 

 
「ん?」
 
訳が分らないまま私はワイズさんに手を引かれ部屋に入る、っていうか入れられた。
  

 

 

 
ぱたむ。
 

 

  

 
「あのー…朝食…」

  
ちょ、ちょっとちょっと!どうしたのこの人…?!女嫌いとか言ってなかった?!
なのに部屋に連れ込んで…
 

ってこっち来た…!…え?距離近くない?!
 

 
気付けばカイリの目の前すぐにワイズが立っている。
何をされるのかとカイリは少したじろぐ。
 

 
「え…ちょっ!」
  

 
迫る顔から逃げるように左右をキョロキョロ見て気を紛らわせる。
足が動かない。どうしようと戸惑い続けるばかりだ。
 

  

 

 
ドサッ
 

 

  

 
「うわゎゎっ!!?」
  
 
イキナリ体が重たくなった。
だけど立っている…何かと思って目を開けると…
 

   

 
「…ぐぅ…」
 

 
「…はい?」
 

 
寝てる。
私に雪崩れてきたワイズさんは気持ち良さそうに規則的な寝息を立てだした。
 

…何寝てんのよ…
 

 

 
バタ
バタバタバタ!!
 

 
「俺がちょっと目を離した隙に何やってんだよ!!」
 
「だっておもしろそうだったんだも〜ん♪」
 

 
するとドアの向こうからいくつかの足音と声が聞こえた。
ダンテとアルフさんの声だわ…

 

私はとりあえず床に座り、ワイズさんはそのままにしておいた。
下手に起きられても誤解が生じるだろうし…
だきつかれたまま、頭の上にクエスチョンマークをいくつも浮かべ渋い顔をする。
っていうかなんでこんなことなってるんだろ…

 

ガチャ

 

「ぬだー!!やっぱりこーなってるし!!」
 
私とワイズさんの現状を見てダンテは頭を抱えて叫んだ。
アルフさんは相変わらずヘラヘラ笑ってる。
冷静はいいけどちょっとは反応してほしいなぁ…
ん?待てよ…「やっぱり」って事は…
 

 
「ダンテ、やっぱりってどういう…」
 
「あーワイズはねぇ、低血圧なんだ〜。」
 

 
ヘラヘラくねくねしながらアルフさんは私に近付き自慢気に話してくれる。
…なんなんだろう、この人の意味不明な余裕は…
 

  
「低血圧?」
 
「朝は寝起きが悪くて人に抱き付く傾向があるんだ。」
 
「なんですか、その意味不明な性質は…;普通低血圧って不機嫌とかじなゃないですか。」
 
「ま、基本変な子だし♪」
 

 
えぇそうね…確かに変な子だわ…
 

 
起きる心配が無いと分かり、ワイズさんを床に転がしてさっさと離れる。あぁ…
重かった。細身といっても全体重かけられたらしんどいなぁ…。
ため息をつく私の横には、もう慣っこだからと言った表情のアルフさん。何かを
企んでいるような、そんな妖しい笑みを浮かべて二人を眺めている。
ダンテは近寄りワイズさんのシャツをぐいぐい引っ張り身体を揺さぶる。
 

 
「おいワイズ!起きろ!!おーきぃーろぉお!!」
 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
「…痛い…」
 

 
ダイニングに降りてきたワイズさんは皆さんより少し遅めの朝食を取る。
さっきダンテに叩かれ赤くなった頬が痛そう…。
 

 
「当たり前だ!!17回ひっぱたいたんだからな!」
 
「なぜお前に叩かれなきゃいけない…俺の安眠を妨害するな…」
 

 
向い側にはダンテが頬杖をついて構えている。
  

 
見張り役…?
  

 
ワイズさんはムスッとしながらオムレツを掬って口に運ぶ。
女は嫌いだ!とか言いながらその女の料理を食べるのはOKなんだと思ってしまった。
見掛けによらず食事はシッカリ取るのか、予想外にたくさん食べている。
あんな華奢な身体のどこに吸収されているんだろうと素朴な疑問を持った。
彼自身は気に食わないながらも自分の料理をたくさん食べてくれる事は嬉しかった。

 

 

 
「お前言ってる事とやってる事全然ちがうよなー。女は嫌いだ!とか言ってたくせに・・・」
 
「…」
 
「まぁまぁ、人には色んな事情があるわけだし。」
 

 
 
ダンテとアルフさんのコンビが話しているとワイズさんは
食べ終わった食器をさっさと持って行き、階段を登って行ってしまった。
 

 

 
「…ったぁーく、ごちそうさまぐらい言えってーの!」

 

 
 
ワイズさんが去る姿を見送るとダンテはダラリとテーブルに両手を伸ばして口を3の字にする。
 

 

 
「いいよ、いっぱい食べてくれて嬉しかったから。」
 
「ワイズって見た目によらず大食らいなんだよねぇ〜」
 
「そんなに食べるんですか?」
 
「そうだね〜パスタだったら5人前…ピザなら軽く3枚は食べるね。」
 
「多ッ!!」
 

 

 
たまりかけの食器を洗いながらワイズさんの食いっぷりを思い出す。
…人は見掛けによらないものなのね…
 

 
「…え、だったらさっきの量だったら普段より全然食べてないですよね…
ーん…口に合わなかったかなぁ…」
 

 
肩を落としてしょぼくれる。
たくさん食べてくれてる〜なんて喜んでたさっきまでの自分がバカみたいだ…
 

 
「いや、あれはただ単に加減してただけだよ。」
 
「加減…ですか?」
 
「う〜ん、ほぼ初対面の女の子の前でその子が作った料理ガンガン食べるのは…
失礼とか思ったんじゃな〜い?」
 
「!」
 
「えー。アイツそこまで考えてるかー??」
 
「ダンテには分らない大人の男の気遣いってヤツさ。珍しく自分で食器片付けて
たし、クリスのパン2枚しか食べてないなんておかしいもん。」
 
「あー確かに…って俺だって気遣いぐらいするっての!!」
 

 

  
アルフさんがそう言ってくれてちょっとホッとした。
 
良かった…美味しくなかった訳じゃなかったんだ…
私の事嫌ってたわけじゃなかったんだ…そればかりか気遣ってくれてたんだ。
 

そう思ったら顔が綻んだ。
 

 

 
「…良かった…」

 
「まぁ反応薄かったり、口悪かったりするけど根は悪いヤツじゃないからさ、仲良くしてあげてね。」
 
「はい!」
 

 

 

 
昨日の今日であんな反応だったから、
これからどうしようって心配になったけど、思ったより悪い人じゃなさそう。
なんだか、こっちが牙向いてた感じだったから申し訳なく思った。

 
…よし!絶対仲良くなってやる!!

 
…ま、まぁ…徐々にだけど…ね…
 

 
「あ、皆さんおやつ何が良いですか?」
 
「え!カイリさん作ってくれるんスか?!」
 
「うん!一応家政婦なわけだし♪何がいい?」
 
「じゃあクッキーが良い!チョコレートの!」
 

 

 
目をキラキラさせるダンテはどうしてこう可愛いんだろう…
自分より背は高いけど、つい頭をなでなでしてしまう。
 

「あ、俺はアップルパイが良いなぁ♪」
 
「はい!じゃあ作っておきますね!」
 

 

 
そうして二人はちょっと出かけてくると言い、お屋敷を出て行った。
  

 

…あれ?いつ帰ってくるんだろ…

  

 
とりあえず
昼食は食べなさそうなのでとりあえず作る量が減ってちょっとラッキー♪笑