Thirteenth * Pretty girl
3
「あ!ここがダンテの部屋なのね!広〜い♪」
メトロはダンテの部屋をぐるりと見渡す。
ダンテの部屋は広くて光がよく差し込む南側に位置する。
そんな中、メトロは窓際に立ち外を眺めながら楽しそうにはしゃぐ。
「…お前さ、どういうつもりだよ。
お前からの手紙はいつもすぐに返してる、それにここには来るなって言ってただろ。」
「ただアタシはダンテに会いたかったの、事故に遭ってからずっとこのお屋敷暮らし…
うちにおいでって言っても聞いてくれなかったし。」
「だってあれは…あの時は一人になりたくて。」
二人は昔からの幼なじみだった。
父親同士の仲が良く幼い頃は二人でよく遊んでいたものだった。
しかしダンテ達家族が事故に遭いダンテをメトロの家に引き取る話しもあったのだが、
ダンテは行かず屋敷に暮らす事を決めたのだった。
その条件として定期的に連絡を取るため頻繁に手紙でやり取りをしていた。
「…お父様もお母様も心配してたよ、
私は外で会ってたけど二人は事故以来ダンテと会ってないんだもん。」
「そっか…うん、おじさんおばさんには元気でやってるって伝えといてくれよ。
だからお前は早く帰ってくれ。」
ダンテはメトロを見ずにベッドに腰掛けて静かに話す。
普段の雰囲気とは違いどこかさびしげで大人びて見える。
「ちょっと!いくらなんでもそれはないでしょ!
ねぇダンテ、やっぱり今からでもうちにおいでよ、
うちでならエンデールなんかよりもちゃんとした学園に通わせてあげれる、
ダンテに見合った大学にだっていかせてあげられるよ?」
「良いってば、俺留年してでもエンデールを卒業するし…
大学には奨学金で行くつもりだから、そんな気は回さなくていい。」
メトロの家は由緒正しい血筋を持った家系の為、財力はかなりある。
ダンテ一人養うのは容易い事だ。
事実幼い頃ダンテが孤児院にいた頃もメトロの家が援助していた。
しかしダンテは表情一つ変えずにゆっくり諌めるように話す。
「……。っていうかあの女とはどういう関係?
アタシが見た時二人でどこか行ってた風だったけど?」
「買い物に行ってただけ、深い意味なんてないってば。何勘繰ってんだよ。」
ダンテは更に機嫌を悪くし気だるそうに言う。
そんなダンテに苛立ったメトロは思い切り不機嫌な顔をする。
「ダンテ…あの女が好きなのね。」
「はぁ?!なんでそういう話になるんだ!」
「決めた。アタシもここに暮らす、そんでもってあの女に宣戦布告してやる!!」
ダンテを見つめる目には奥でメラメラと炎が燃え盛っている。
メトロはくるりと踵を返すと勢いよくドアの方に歩きだす。
「やっやめてくれ!!頼むからそれだけは!!」
「なによ!アタシがいたら迷惑だって言うの?!」
「もう迷惑なんだっつの!!連絡なしにこんな所来て!!
カイリさんに看病してもらったっていうのにいきなり盾突くわ!!」
「だってそれはダンテが女と暮らしてる事言わないから!」
「メイドはまた違うだろが?!」
コンコン
またも痴話喧嘩が始まった。
醜い言い合いをしているとノックの音が聞こえ、二人はピタリと動きを止めた。
「あ?」
「お取りこみの所失礼します。
なんだかお話が纏まらないようなので私から一つ提案があります。」
「なんだよ…。」
クリスが爽やかに修羅場と化したダンテの部屋に足を踏み入れた。
なにやら考えがあるのか含みのある笑みを浮かべている。
「とりあえずメトロさんにはここで暮らして頂きましょう。
そうですね…2週間という期限つきでいきましょうか。」
「げっマジかよ?!」
「良いの?!」
ダンテの顔が引き攣った。
メトロはキラキラとした目をしてクリスを見つめる。
「そのかわり私が一緒に住むのは不可能だと判断した場合は
今後一切屋敷への出入りを禁止させて頂きます。」
「えぇ分かったわ、その条件で構わないわ。」
「マジかよ………。」
あまり良い方向に行かなかった事を残念がりガクリとうなだれるダンテ。
ただただ、メトロが屋敷から出ていく事を願うばかりだった。
その後クリスが静かに口元を小さく動かしたのを見たものは誰もいなかった。