Thirteenth *Pretty girl
1
肌寒い季節、そろそろコートを出そうかと悩みだすそんな秋。
物思いにふけてしまう秋。
そして食べ物が美味しい秋。
カイリはダンテの【美味い魚が食いたい】要望を叶えるためいつもは行かない漁港に繰り出していた。
「あぁ寒い!!マジ寒いッス!」
「あと少しでバス乗れるし、もうちょっと我慢してね。
それにダンテが買い物に言い出したんでしょ?」
「そっそうなんスけどぉ…」
勿論言い出しっぺのダンテを横に連れて。
寒がりなダンテはマフラーを首にぐるぐる巻き付け口元まで隠している。
おまけに厚着したパーカーの上には分厚いジャケットをしっかり着込んだ完全装備。
そして両手に今日手に入れた戦利品をたくさんぶら下げカタカタと体を震わせている。
「…そんなに寒いの?」
「俺、本気で前世猫だったんじゃないかってくらい猫の体質と似てるんスよ。寒がりで魚好きで猫っ毛で…」
目をぎゅっとつむって寒さを堪える姿がとても愛らしい。
風に吹かれ、ダンテのくるくるとした茶色い髪が揺れるのをカイリはつついて楽しんでいる。
「あー顔とか性格も猫っぽいわよね。目も黄色で猫目だし気まぐれで拗ねやすいし。」
「え!そんなふうに思ってたんスか!?」
「ふふ、あと甘え上手でどことなく憎めない所とかね。」
カイリはクスクス笑いダンテ弄りを楽しんでいる。
そんなカイリの横でダンテは頬を膨らませてそっぽを向く。
その態度は皮肉にもやはり猫っぽくカイリは心の中で小さく笑うのだった。
だんだん近づく小さなバス停を見つけるとダンテは急ぎ足でバス停に駆けた。
暫くしてバスが来た。
のんびりとした町をバスで揺られて数分。
バスを降りて屋敷までの間にある並木道を二人はゆっくり歩いていた。
午後の暖かい時間になりダンテは巻いていたマフラーを前を開けてだらりと首にかけている。
「暑い…。着込みすぎた…。」
「日中は暑くなるって天気予報で言ってたじゃない。」
「うぅ…。…!!」
暑さでだるくなってきたダンテは足取りがふらつき出した。
そしてため息をついたその時何かを見つけたのか大きな目を更に見開き大きくした。
その様子に気がついたカイリは不思議そうに首を傾げてダンテに振り向いた。
「ん?どうしたの?…あれ?お客さんかしら…。」
「………カイリさん裏から、裏から行こう。さぁ早く。」
固まるダンテが見つめる先に視線を移してみるとお屋敷の前に佇む一人の女の子がいた。
ピンク色のツインテールにピンク色のワンピースを着た
とにかくピンクピンクしているとても可愛らしい雰囲気を纏っている女の子。
あんなに可愛らしい女の子は中々いない、そんな女の子と知り合いなんて
男の子からみたらすごく羨ましいんじゃないかと思うカイリ。
しかし、ダンテは顔色を変えて一目散に裏に回ろうと彼女を急かす。
「え?だって知り合いじゃないの?それにお客さんなのかもしれないし…」
「良いから!!見つかると面倒だかr…!!」
「あっ!ダンテーーー!!」
ダダダダダダダダ!!!
「うっわぁ来たぁ!!!」
「てぇい!!♪」
ガバッ!!!
ダンテが声を荒げた瞬間、ピンク色の彼女はダンテ目掛けて物凄い速さで走り飛びついた。
「!?」
「酷いわダンテ!久しぶりの再会なのに逃げようとするなんて!」
「いだいッ!!マジ痛いから放してくれぇ…!!」
いきなりな事でただ目をぱちくりさせているカイリの前でピンク色の彼女はダンテを痛い程に抱きしめた。
「なんでそんな悲しいこと言うのよぉ〜!!アタシ達こんなにも愛し合ってるのにぃ!!」
「え、えっとちょっと落ち着いて下さい・・・!
とりあえずあの、ダンテを抱きしめる腕を弱めてあげて下さい・・・!」
熱烈に抱きしめられ過ぎて骨が変な方向に曲がるんじゃないかと
心配したカイリはピンク色の彼女に冷静に話しかける。
このままでは本当にダンテの命がヤバそうだ。
「むっ!アナタ誰よ?!なんでダンテの事知ってるの!?」
「ええっと、私はこのお屋敷の家政婦でダンテとは一緒に暮らしていますから…。」
「いっ一緒に暮らしてるですって!!?…はうっ…」
バターーーン!!!!!
やっとカイリの存在に気づいたピンク色の彼女は、気づくなり食ってかかり出す。
そう思った次はその場で卒倒してしまった。
「えっえぇっ?!ちょっとあの!!」
「…あーぁ…面倒な事になったなこれは…。」