Twelve ＊I remember you

1

^{『カイリ！』}

  

^{貴方の事を忘れられない。
ほとんど顔も覚えてなくて…
どんなふうに貴方とすごしたのかも分からないけど…
貴方が私にとって大切な人だということは確かだから。}

   
^{もう一度貴方に会いたい。
もう一度貴方と話したい。
貴方は…今どこにいるの？}
 
 

  
^{ひやっとした風が吹いている。あぁ…もう秋みたい。
もう夜の外はひんやりとした空気になり上着が一枚ないと肌寒く感じてしまう。
そんな秋の夜、私はふと目を覚ました。}
 

 
^{「窓…開いてる。」}
 

  
^{前にも似たようなことがあった。
私はよく窓を閉め忘れるのか月に一度はこうして窓を開けたまま寝てしまっている。
どうやったらこのクセは直ってくれるのかしら。}
 

   
^{「…あれ？」}
 

 
^{またやってしまったと思いながらバルコニーに顔を出してみると
隣のバルコニーにアルフさんがいた。}
  

  
^{「………。」}
  

  
^{夜空に浮かぶ満月を見上げるその顔は無表情で、
だけど細めた目はどこか寂しそうに見えた。}
  

  
^{「…アルフさん？」}
  

  
^{いつもと違う様子に戸惑いながら私はそっと声をかける。
一瞬アルフさんが驚いた顔でこちらを見たような気がした。}
  

  
^ぶわぁっ
   

  
^{「わゎっ！？」}
  

   
^{急に風がふき、私はとっさに部屋の中に引っ込んでしまう。}
  

  
^{「………アルフさん…？」}
  

  
^{もう一度バルコニーに顔をだしたが、そこにはもうアルフさんの姿はなかった。}
  

  
^{「………」}
  

  
^{私はキョロキョロと辺りを見回し、アルフさんを探した。
けれど部屋にまで行く気は起こらず、先程までのアルフさんと同じように満月を見上げた。}
   
   
  

  
^{変に目が覚めてしまった私は水を飲みに一階に降りた。}