Eleventh reason

2

 

随分蒸し暑くなってきた外はお昼過ぎということもあり、おひさまのパワーは最高潮。
こんな真夏に洗濯や買い物は結構きついけれど、基本動く事が好きな私はいつもと同じように家事をこなす。
洗濯中に足元に近寄ってきた金色のモコモコ…じゃなくてハニーを待たせて洗濯を終える。
汗ばむ顔をタオルでふいてかみついてくるハニーとじゃれあっていると、
外から帰ってきたお疲れ気味のワイズがこちらにやってきた。

  

  

「暑い………」
「そうだね、夏だもんね。」

  

見るから暑さに弱そうなワイズは、いつも以上に眉間にシワを寄せて日光を避けるように屋敷の影に立つ。

   

「暑いのは苦手だ…」
「じゃああとでフラッペでもしようか?」
「フラッペ…!」

    

食べ物の話になった途端にパッと表情が明るくなるワイズはなんだかすごく可愛かった。

   

「ふふ、楽しみにしててね。」

   

こんな表情を見られるなら毎日作ってあげたくなる。
さて、期待に応えられるように張り切って作らなくちゃ!

   

 

 

  

  

 

 

 

 

 

 
ワイズが屋敷に戻り、また暫くハニーとじゃれあっていると、
ミルク瓶を持ったダンテが視界の隅に見えた。コソコソとした動きがとてつもなく怪しい……
それに、前にも同じような事があった。
その時は怪しいダンテの後をつけてみたけど上手くまかれてしまい結局真相が掴めないままだった。
しかも屋敷の中で見ただけだったからダンテ自身が身長を気にしてミルクを飲むのかと思ったけど、屋外なら話しは違う。
私はどこかワクワクしながらダンテの後をつけることにした。
 

 

 

  

 

ミルク瓶を持ってキョロキョロ辺りを見回しながら裏庭まで来たダンテ。
私は息を潜めて屋敷の陰に隠れる。
ハイドさんのハニーの件もあってダンテの行動が何を意味するのか確信があった。
ただ、それがなんなのか、そこが問題。

   
どうしよう…まさかの象とかだったら …!
希望としてはウサギとか羊とかウォンバットとか…有り得ない妄想をしながらあとをつける。
ダンテが裏庭のベンチに座り暫くすると 小さな猫がダンテに近づいていく。

 

  

「にゃぁ〜」

  

 

  

まだ小さくてか細い声のその猫は、ブルーシルバーの毛が印象的なとてもかわいらしい猫。

  

「あ!ほら、ご飯だよ、シル♪」

 

嬉しそうに笑顔で猫を撫でてやるダンテ。
持ってきたミルクを、木陰に隠していた器に注ぎ猫の前に出す。
その姿があまりにも可愛らしく微笑ましかった。
じっとその様子を見ていると、視線に気づいたのか、不思議そうにダンテはこちらに顔を向けた。

 

  

「あ!カイリさん!」
「…見つかっちゃった。」
「なんだ、いるならいるって言ってほしかったッスよ〜!ほら、こっちこっち! 」

 

   

ベンチから立ち上がり私の元に駆け寄ると私の手を引いて猫の方へといそいそと歩く。

   

「へへっ、可愛いでしょ?」
「うん、とっても!この子…もしかして春からお世話してた子?」
「あ…やっぱり知ってたんスね。そーッスよ、雨の日にずぶ濡れになってこのベンチの下にいたんス、たった一匹で。
俺猫好きだし…なんかほっとけなくてさ。 こっそり裏庭に住まわせてるんスよね。」

 

  

ダンテは優しくも寂しげな表情で子猫を撫でる。
家族がいなく、雨に打たれていた…その境遇に自分を重ねているんだろうか。

   

「クリスさんには言わなくていいの?ハニーみたいに認めてくれるかもしれないでしょ?」
「絶対無理…」
「え?」

    

急にずんと重くなったダンテの空気にやや驚く。

    

「ハニーを屋敷で飼う時にクリスが『まぁ…犬一匹なら』って言っててさ、
しかもクリスって元々猫嫌いなんスよ。」
「そうなんだ…でもこの子がかわいそう…」
「俺もさすがにずっとここはちょっとって思ってて…衛生面も建物の中程良くないし。」
「…ねぇ、クリスさんがなんで猫がきらいなのか聞いてみようよ、
もしかしたら意外とすぐ解決出来るかもしれないし♪」
「う、うん!そッスね!」

 

 

ダンテは子猫を抱き抱えてやや心配そうに私のあとについていく。
ハニーを迎え入れてくれたクリスさんだ、きっとこの子猫も迎えてくれる。

 

 

 

  

  

  

 

 

 

 

  

「ここは保健所でも動物愛護施設でもないんですよ?」

 

ちょうどリビングにいたクリスさんは、私達の姿を見るやいなやため息をついた。

   

  

「でも、ハニーの時は良いって言ったじゃん!」
「あのですね、犬はまだ従順ですし外でも飼いやすいですが、猫は違います。」
「でもでも、ちゃんとしつければきっと大丈夫です!」
「結論から言いましょう。私は猫が嫌いです、屋敷主である私がそういう限り屋敷で飼うことを禁じます。」
「…クリスさんはなんで猫が嫌いなんですか?」
「昔猫に思いっきり引っかかれました噛み付かれました私の大切なコレクションを台なしにされました、以上です。」

  

   

  

しれっとダークに笑うクリスさん…これは、本当に嫌いみたいね……
私とダンテはクリスさんの剣幕を前に黙り込んでしまう。
子猫は小さく鳴いて抱き抱えるダンテに顔を擦り寄せている。
こんなに小さくか弱い子猫をまた外にださなければいけないのかと思うと胸が痛くなる。

 

  

 

「…別にこのまま外に放り出せと言っているわけではありません。ちょうど子猫を飼いたがっている知り合いがいます。
その人に引き取ってもらいましょう。それまでなら飼っても良いですよ。」
「クリスさん…!」

 

    

嫌々ながらも良心が痛むのか、クリスさんはしょうがなさそうに頭を抱えてそう言う。

 

  

「でも、もう拾ってこないで下さい。面倒みきれません。」
「クリス、ありがとな。」
「…はぁ。」

   

   

  

   

  

   

その三日後、クリスさんの知り合いの代理という黒服の男性が子猫を引き取りにきました。
ダンテはすごく渡したくなさそうだけどこればかりはしょうがないものね…。
だけどクリスさんがこんなにも猫嫌いだったなんて知らなかった。
理由は聞けたけど、私にはどうもあの理由だけじゃ納得できなかった。

  

他にもっと大きな理由があるんじゃないかしら・・・。