Tenths Nightmare

1

 

どうか…どうか間に合ってくれ…!!

もうあんな悪夢は…見たくないんだ!!!

 

 

 

2年前…

あの頃の俺は宵都でカジノのディーラーをしていた。
他にもゲームのデモンストレーションやバーテンダーもしていてそれなりの生活を送っていて…
夜中はずっと仕事でルシアとは仕事の後に必ず会い、幸せな毎日を過ごしていた。

  

そしてあの日は、ルシアがいつもより少し早く俺を迎えに来た…

   

 

 

 

 

  

 

 

『バベル、お疲れ様!』

『あぁルシア…ちょっと待ってろ、もうすぐ終わるから。』

『うん、じゃあ表で待ってるね。』

『あぁ…』

  

俺はルシアを表に待たせて、最後のゲームを始めた。

  

『…ちょっと早かったかなぁ…』

  

時計を見ながら、いつもより早く着いてしまった分の時間をどう過ごそうかルシアは悩む。

 

『ねぇねぇお姉さん一人?』

『…いえ、彼を待ってます。』

  

従業員用のドアの前でバベルを待つルシアに声を掛けてきたのは、いかにも軽そうな青年3人組だった。
とっさに身の危険を感じたルシアは顔を背けてその場を離れた。

  

『じゃあさ、その彼がくるまで俺たちと遊ばない?楽しいよ♪』

『結構です、間に合っていますから。』

『堅い事言いっこなし!ほら行くぜ!』

『えっ、ちょっやめっ…!いやっ!!』

  

早足で3人を撒こうとしたが、一人の青年に腕を掴まれてしまう。
ジタバタと身体を動かしてどうにかして手を解こうとするが、華奢な彼女の力ではどうにも出来なかった。

  

『あんまりでけぇ声出すなよ…キレイな肌に傷ついちまうぜ?』

『…っ!…やっ…いやぁ…バベル…っ!!』

『あははっ、彼氏は来そうになさそうだな!ほらこっちこっち!』

   

ナイフを顔に突き付けられ、恐怖の余り涙をこぼすルシア。
青年達はルシアを連れて暗い暗い路地裏へと消えた…

  

  

『…ったく、マスターのやつ急に仕事持ってきやがって…。
きっと待ちくたびれてるよな…。悪ぃルシア!…ん?いねぇ…』

   

ようやく仕事を終えられた俺は、ルシアの待つ従業員用のドアの向こうに急いだ。
しかしそこにはルシアの姿がなく、煙草をくわえたオッサン一人だけだった。

  

『ん?アンタさっきの姉ちゃんの連れかい?』

『え?あぁ…多分…』

『あの子なら3人ぐらいの男と向こうに行ったよ。』

『…なんだと?!』

 

待たせていた20分程の間にいなくなったルシアを探しに俺は夜の街を走った…
胸騒ぎがした…だけどどうか…この胸騒ぎが、気のせいであってくれ…!!!

  

 

 

  

 

 

  

 

  

『へへっ…サイコーだぜ?お姉サン…♪』

『…やぁ…いやあっ…』

   

バベルの店から数十メートル離れた暗い路地裏に4人はいた。
一人の青年に組み敷かれた、ほとんど服を着ていないルシア。
ルシアは髪と服を乱してぐったりと冷たい床に仰向けに倒れている。
青年は額に汗を浮べてニヤリと笑うと、ルシアの白い首筋に舌を這わせた。

  

『次俺!ほらさっさと代われよな!』

『慌てんじゃねーよ、次は一気に3人でやっか?』

  

その周りを囲むように残る2人が楽しそうにルシアと青年を見ていると、
痺れを切らせたようにルシアに近付く。

  

『おっ、さんせーい♪』

『んじゃあいくぜ?』

『やっ…いやっ…』

『悪いな、あんなトコに一人でいるアンタが悪いんだぜ…っ!!』

     

     

  

 

『いやあああああッ…!!!』

  

  

  

ルシアの悲痛な叫びが悲しく路地裏に響いた。

   

  

 

 

『ルシア!!…っ!!?…テメェ…ッ!!!!!

   

 

  

  

『うわ彼氏さんとやらが来ちゃったか〜』

  

その声を聞き付けたバベルが、惨状を見て一瞬声を失ったが、すぐに怒りの表情に変わる。

  

『っテメェら全員許さねえ!!!』

『ヤバいヤバい!おい、ずらかるぞ!!』

『へいへい!じゃーね♪おねーさん♪』

『待てっ!!…くそっ、暗くて見えねぇ…!!…ルシアっ!!』

   

3人は地面に放り投げた上着を手にして素早く夜の闇に消えて行った。
悔しそう に歯を食いしばるバベルだったが、そばでぐったりとしているルシアに近付き抱き抱える。

 

 

 

『っ…うっ…』

  

男達に犯され泣き崩れるルシア。
彼女の首や胸や足には紅い印がたくさん残されていた。
バベルは自分の上着を脱いで彼女にはおわせるが、彼女の身体は震え、顔は俯き、何も喋れない状態だった。

  

『…ルシ…』

 『やあっ!!来ないでぇっ…!!』

  

抱き締めようと手を伸ばしたその瞬間、ルシアはバベルの手を払いのけた。
初めてのルシアからの拒絶に驚きつつも、自分が犯した罪に気づくバベルはルシアにもう一度手を伸ばす。

  

  

『ルシア…っ!』

『やぁっ!!いやぁっ!!』

『…っ、ルシア…俺だ…バベルだ…』

   

 

ショックで取り乱すルシアはバベルの腕の中でジタバタと暴れた。
そんなルシアを見たバベルは優しく抱き締める。

   

  

『…バ…ベル…。うっ…ふえぇ…バベルっ…バベルぅっ…!!』

   

  

『ごめん…本当にごめんっ!!こんな事になるなんて…お前を…こんな目に合わしちまうなんて…!!』

  『私の方こそっ…ごめんなさい…汚してしまって…バベルだけだったのに…ごめんなさい…っ!』

   

  

バベルを認識したルシアは大粒の涙をポロポロこぼし、バベルにすがりついた。

 

   

『…ルシア…ルシアっ…!!』

  

 

自分の気の許しで互いを傷つけてしまった事に二人は深く悲しんだ。

 

 

 

 

『…守れなくて…ごめん…』